国家試験

ビタミン欠乏症

理学療法士・作業療法士の国家試験には脂溶性か水溶性か、ビタミンの欠乏で起きる病気についての問題が比較的出題されていますので、必ず押さえておきたい内容です。本記事では、ビタミンの機能と欠乏症状について解説します。また、この分野は看護師や他医療従事者にも必要な知識となります。

ビタミンとは

ビタミンとは、正常な生理機能を維持するために必要な栄養素です。

このビタミンが不足・欠乏すると様々な症状が出現します。

各ビタミンの機能と欠乏症

ビタミンA : 小児では、成長停止、成人では夜盲症や角膜軟化症  

 ビタミンAは視覚と視力を保つのに不可欠です。周りが暗いところでも、慣れてくれば、見えるようになる暗順応や色の違いを見分けることもビタミンAの働きによるものといわれています。また、子供の骨の成長に成長や発育に関与します。

ビタミンD : 小児ではくる病、成人では骨軟化症

 小腸におけるCa2⁺とP⁻の吸収を促し、骨の形成に関与します。

ビタミンE : 赤血球の溶血

 不飽和脂肪酸が酸化するとシミ、シワが増え、皮膚が老化します。ビタミンEはそれ以上に酸化をしないように阻止する働きがあります。また、毛細血管を広げて血行の改善に関与します。

ビタミンK : 凝固異常(出血傾向)

 血液凝固因子のプロトロンビンなどの生合成に関与します。

ビタミンB1 : 脚気(多発性末梢神経炎、うっ血性心不全)ウェルニッケ脳症)

 糖の代謝をスムーズにし、糖質をエネルギーにするのに必要不可欠なビタミンです。ビタミンB1の不足によって起こる症状に脚気があります。脚気には、全身がだるくなったり、手足がしびれる、下肢がむくみ(浮腫)などの症状があります。また、ウェルニッケ脳症になることもあります。ウェルニッケ脳症、重症になった場合、意識障害、眼球運動障害、歩行障害(運動失調)などの症状が現れます。アルコール依存症の人がなりやすいといわれています。

ビタミンB2 : 口角炎、舌炎、顔面の脂漏性湿疹、角結膜炎

 脂質をエネルギーに変えるのに不可欠なビタミンです。また、脂質が新しい細胞をつくる手助けをします。そのため、皮膚、口、喉、眼などの粘膜をつくりかえ、健康に保とうとします。

ビタミンB6 : 皮膚炎口内炎

 タンパク質を分解してエネルギーにかえ、分解したアミノ酸で筋肉、血液などをつくります。また、ビタミンB2によって活性化されます。

ビタミンB12 : 悪性貧血末梢神経炎の症状

 赤血球をつくります。葉酸も同様の作用があるといわれています。

ニコチン酸(ナイアシン) : ペラグラ(皮膚炎、下痢、認知機能低下)

 皮膚や粘膜の生まれかわりに欠かせないビタミンB群の一種でアルコールを分解して無毒化する働きもあります。

葉酸 : 巨赤芽球性貧血

 赤血球の成熟に関与します。ビタミンB12と同様に赤血球をつくります。

ビタミンC : 壊血病

 抗酸化作用、コラーゲンの生成に関与するとともに鉄の吸収を促進します。また、壊血病はコラーゲンが十分につくられなくなるため、毛細血管が弱くなり、出血する病気です。漫画「ワンピース」でも取り上げられた病気で進行すると、歯肉、筋肉、骨などに起こり、出血がみられます。

国家試験問題

理学療法士・作業療法士国家試験では、以下の問題が出題されています。

第58回午前76 胃全摘出術後の巨赤芽球性貧血で欠乏する栄養素はどれか。

1. ニコチン酸

2. ビタミン A

3. ビタミン B1

4. ビタミン B12

5. ビタミン C

解説

胃の切除後、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)で欠乏するビタミンはどれか?と聞いています。ビタミンB12や葉酸が不足することで生じる貧血ですので、正解は4となります。

第52回午後77 ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。

1. ビタミン A

2. ビタミン B6

3. ビタミン B12

4. ビタミン C

5. ビタミン K

第58回午前85 ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。

1. ビタミン A

2. ビタミン B1

3. ビタミン C

4. ビタミン E

5. ビタミン K

解説

過去10年で2回出題されています。ビタミンKは血液凝固、つまり、血液を固めるために必要な栄養素です。ワルファリンは抗凝固剤であるため、ビタミンKが働きを阻害し、血液が固まりにくくする作用を弱めてしまいます。ビタミンKは納豆、クロレラ、青汁などに多く含まれているため、臨床場面では、摂取を控えるように指導します。

第58回午前93 ビタミンと欠乏時の症候との組合せで正しいのはどれか。

1. ビタミン A  舌 炎

2. ビタミン B1  皮下出血

3. ビタミン C  末梢神経障害

4. ビタミン D  骨粗鬆症

5. ビタミン K  壊血病

解説

ビタミンAは夜盲症、ビタミンB1は脚気、ビタミンCは壊血病、ビタミンKは血液凝固異常です。ビタミンDは骨形成に関わり、欠乏することで骨粗鬆症を引き起こすため、正解は4となります。

ビタミン欠乏症のまとめ

ビタミンA : 夜盲症、角膜軟化症

ビタミンD : くる病、骨軟化症

ビタミンE : 赤血球の溶血

ビタミンK : 凝固異常

ビタミンB1 : 脚気(多発性末梢神経炎、うっ血性心不全)、ウェルニッケ脳症

ビタミンB2 : 口角炎、舌炎、顔面の脂漏性湿疹、角結膜炎

ビタミンB6 : 皮膚炎や口内炎

ビタミンB12 : 悪性貧血や末梢神経炎の症状

ニコチン酸 : ペラグラ(皮膚炎、下痢、認知症)

葉酸 : 巨赤芽球性貧血(悪性貧血)

ビタミンC : 壊血病

理学療法士・作業療法士国家試験では第58回に多く、関連した問題が出題されてました。比較的覚えやすい分野ですので出題されれば、確実に取りたい問題となります。