理学療法士・作業療法士の国家試験には防衛機制についての問題がほぼ毎年出題されていますので、必ず押さえておきたい内容です。理学療法士が患者の心身の健康を支援する際には、防衛機制の理解も必要になります。本記事では、さまざまな防衛機制について解説します。
目次
防衛機制とは
人は適応することが困難な危機的場面に直面すると、自我を守ろうとして無意識に各種の行動を取ろうとします。フロイトはこのような行動を防衛機制としています。
各種の防衛機制
抑圧
意識に受け入れがたい観念や記憶、感情を無意識に抑え、閉じ込める機制。
昇華
本能的な欲求を社会に容認された事で解消する機制。例えば、性欲などをスポーツやアートなどの創造的な活動に向けるなどがあります。
逃避
現実から逃れることで不快な感情から逃れようとする防衛機制。例えば、現実逃避や幻想による逃避などがあります。
退行
ストレスや不安を感じると、より安全な状態や幼児期の行動に戻ろうとする防衛機制。例えば、ストレスが高まると指しゃぶりをするなどがあります。
置き換え
不快な欲求や感情を対象を別のものに移すことで、それらを抑圧しようとする防衛機制。
反動形成
欲求の遂行が危機を招くとき、これと正反対の態度をとる機制。
合理化
行動の動機になっている真の欲求を隠し、もっともらしい理屈をつけ、自己を正当化する機制。
補償
劣等意識を克服するため、別の価値を実現したり、弱点そのものを克服する機制
取り入れ(同一化)
他者の特性や行動を自分のものとして受け入れることで、自己の不安や欠点を軽減しようとする防衛機制。例えば、他者と同じように行動することで自己のアイデンティティを保とうとします。
投射(投影)
自分自身の不快な感情や欲望を他者や物に向け替える機制
打ち消し
反道徳的行為・思考などに伴う罪悪感をこれと正反対の情動的意味をもつ行為や思考を行うことによって打ち消そうとすること
否認
自己が容認したくない欲求、体験、現実などを実際に存在しなかったものと考え、そのようにふるまうこと
分離
本来は強い情動を伴った観念や行動から感情だけが切り離され、観念や行動が実感を伴わないこと
知性化
感情や欲動を知的な認識や考えで取り入れること
国家試験問題
理学療法士・作業療法士国家試験では、以下の問題が出題されています。
第58回午前78 性的な欲動をコントロールするために、性的なことを理論的に分析しようとする防衛機制はどれか。
1. 抑 圧
2. 行動化
3. 知性化
4. 反動形成
5. スプリッティング
解説
正解は3で性的な欲動を知識をつける行動で防御する。他の例としては、自分の病気を調べて勉強するなどがあります。
2の行動化は抑圧された感情が問題行動となる機制。例えば、患者が治療者に不満を抱き、沈黙を続けているなどです。(沈黙という行動をしている)
5のスプリッティングとは、物事を真っ二つに分け、欲求を満たしてくれる場合は善、そうでない場合は悪として単純化してみることです。
第57回午後79 欲求を満たせないときに、正反対の欲求を発展させ心的平衡を保とうとする防衛機制はどれか。
1. 置き換え
2. 合理化
3. 反動形成
4. 否 認
5. 抑 圧
解説
正解は3で欲求を満たせないときに正反対の行動をとる機制です。
第56回午後80 防衛機制として誤っているのはどれか。
1. 転 移
2. 抑 圧
3. 合理化
4. 反動形成
5. スプリッティング
解説
正解は1で転移とは治療者に感情をむけることで防衛機制とは違い自己を守るような行動ではありません。精神分析療法の一つで好ましい感情を抱くことを陽性転移、ネガティブな感情を抱くことを陰性転移といいます。