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起き上がれないのは肩のせい?脳卒中リハで見落としがちなポイント

脳卒中後のリハビリでは、ベッドからの起き上がり動作が大きな課題になります。 特に、腹筋が使いにくい片麻痺患者では、側臥位(横向き)から起き上がる方法がよく使われます。

でも実は、「起き上がりやすい肩の角度」があるということをご存じでしょうか。

今回の研究は、 自立して起き上がれる人と、見守りが必要な人では、肩の角度がどう違うのかを詳しく調べています。

対象

 脳卒中片麻痺患者 9名

  ・側臥位からの起き上がりが自立してできる人(自立群)5名

  ・見守りが必要な人(監視群)4名 に分類

測定した項目・方法

 側臥位から起き上がるときの「肩関節外転角度」を3回測定し、平均値を使用

結果

 自立群 : 平均:72° 中央値:60°

 監視群 : 平均:126° 中央値:120°

考察

 見守りが必要な人ほど、腕を大きく開いた角度から起き上がっていたという結果でした。

 研究では、次のように考察されています。

①自立群と監視群で角度が違った理由

 先行研究では、健常者:20〜30°

        障害例:50〜60°   で起き上がることが多いとされています。

 今回の結果では、自立群:平均72°(障害例に近い)

         監視群:平均126°(かなり大きい角度)  と、明確な違いが見られました。

②最も難しいのは「側臥位 → 肘立ち位」の場面

 起き上がり動作は4つの相に分けられますが、その中でも側臥位から肘立ち位への移行が最も難しいとされています。この場面では、三角筋後部線維や腹直筋などが働きますが、 肩外転角度が大きいほど筋活動が小さくなるという報告があります。

 つまり監視群は、 「筋力的には楽だけど、動作としては難しい角度(120°付近)」 を選んでいる可能性があります。

③自立群は“重心移動に合った角度”を使っている

 健常者が「起き上がりやすい」と感じる角度は60〜90°に多いとされています。 自立群の角度はこれに近く、重心移動の軌跡に沿った効率的な動作ができていると考えられます。

臨床的示唆(リハビリへの応用)

 ・起き上がり指導の初期は「肩の角度を大きめ」に

   → 肩を大きく開くと筋活動が少なく、動作が成功しやすい

 ・慣れてきたら徐々に角度を小さくして訓練していく

   → より効率的でスムーズな起き上がり動作に近づく

出典:江口 英範 他(2009)「脳卒中片麻痺患者の側臥位からの起き上がり動作自立群と監視群における開始肩関節角度の違い」 理学療法 進歩と展望 23号7-10